焼香の作法|やり方・マナー・宗派ごとで回数が異なる理由

2020年5月26日 法事・法要
焼香の作法|やり方・マナー・宗派ごとで回数が異なる理由

葬儀に参列するとき、焼香の詳しいやり方やマナーがわからないと悩む人も多いでしょう。焼香の順番や行う回数など、毎回マナーが異なるため、前の人の真似をする人も少なくありません。

焼香は故人を供養する意味合いがあるため、しっかりと作法を把握することが重要です。

この記事では、焼香の作法やマナーについて解説します。宗派ごとの違いや回数が異なる理由も解説するため、焼香の作法を知りたい人は参考にしてください。

1.そもそも焼香とは?

焼香とは、お香を焚いて死者や仏様を拝むことです。一般的には葬儀の席で抹香(粉末のお香)を焚くことを指します。

お葬式の儀式は宗教ごとで異なり、焼香を行う葬儀は仏式のみです。代わりの儀式として、 キリスト教式では献花を行い、神式では玉串奉奠(たまぐしほうてん)を行います。

焼香にはしっかりと意味も存在していますが、意味を知っている人は多くありません。ここでは、焼香を行う理由や意味について解説します。

1-1.焼香の意味

焼香を行う理由には、宗教的な面と実用的な面の2つの意味があります。

◯宗教的な理由

仏教において、お香は不浄や穢れ(けがれ)を払うものとされています。焼香は、穢れを取り除き身も心も清められた状態で、故人を供養するために行うものです。

◯実用的な理由

仏教が生まれたインドは非常に暑さの厳しい国であることから、遺体が傷みやすく腐敗臭も発生していたため、匂いを消すために香木が使用されるようになりました。このようにして始まった焼香は、不浄を払うものとして仏教の供養の一つとなっていきます。

インドから始まった焼香の習慣が日本にもたらされ、日本でも一般的な儀式として普及していきました。

2.焼香のやり方

焼香のやり方には、主に3つの種類があります。儀式の都合や会場のタイプ・広さによって、どのやり方で焼香を行うか決めることが一般的です。

参列する葬儀によってやり方は変わるため、どの作法でも問題なくこなせるように把握しておきましょう。

ここでは、焼香の3つのやり方について解説します。

2-1.立礼焼香

立礼焼香は、字の通り立ったまま焼香を行う方法です。椅子の用意されたホール会場・葬儀場で通夜や告別式を行うことが多い現在では、最も一般的な焼香の作法です。

順番が回ってきたときに席を立ち、遺影の前に設置された焼香台へと進んで焼香を行います。夫婦で葬儀に参列している場合、焼香台までは2人で一緒に進み、焼香は1人ずつ行うことが通例です。

2-2.座礼焼香

座礼焼香は座ったまま焼香を行う作法で、自宅や小規模な会場などの和室で葬儀を行う際に選ばれます。自分の順番が回ってきたときに焼香台へ移動して焼香を行う点は、立礼焼香と同じ流れです。しかし、座礼焼香は焼香台までの移動方法が独特のため、覚えておく必要があります。

自分の席から焼香台が近い場合は、「膝行・膝退」と呼ばれる方法を用いて、立ち上がらずに移動することが座礼焼香におけるマナーです。席から焼香台までが遠い場合は、立って中腰で歩きましょう。

2-3.回し焼香

回し焼香は自宅での葬儀や葬儀会場の広さに対して参列者が多く、焼香台までの動線が確保できない場合に採用される作法です。焼香台を祭壇に用意せず、香炉と抹香を乗せたお盆を参列者の間で回し、各自が自分の席で焼香をします。

焼香を終えた隣の人から、軽く会釈をして香炉と抹香の乗ったお盆を受け取り、焼香を行って次の人へ回す流れです。回し焼香は、高齢者が多くスムーズに立礼焼香を行うことが難しい葬儀の際にも選択されることがあります。

3.宗派ごとに焼香の回数は異なる

葬儀の際の焼香は、宗派によって作法もさまざまです。抹香を香炉にくべる回数や額に押しいただく回数など、宗派ごとに細かく指定されています。

くべる回数には意味が存在するため、宗派ごとに回数もバラバラです。

宗派ごとの作法について、以下の表にまとめました。

抹香焼香 線香焼香
回数 押しいただくタイミング
真言宗 3回1回目のみ必須3本立てる
三宝=「仏・法・僧」に捧げるため3回が基本
曹洞宗 2回1回目のみ必須1本立てる
1回目を主香、2回目を従香と呼ぶ。焼香の際は左手に右手を添える
日蓮宗 1回1回目のみ任意で行う 2~3回目はしない 1本または3本立てる
僧侶は3回行うが参列者は1回
天台宗 1回または3回3回とも行っても行わなくても良い3本立てる
臨済宗 1回または3回3回とも行っても行わなくても良い1本立てる
決まりはないが、回数は1回が多い
浄土宗 1~3回3回とも行っても行わなくても良い決まりはなし 1本立てるか寝かせる
浄土真宗本願寺派 1回押しいただかない1本の線香を香炉に入るよう数本に折って寝かせる
焼香前に合掌しない
浄土真宗大谷派 2回押しいただかない1本の線香を数本に折って寝かせる

いずれの宗派も、参列者が多い場合は1回で良いとされています。

4.焼香のマナー

焼香の際には他にも注意すべきマナーがあります。ここでは、さまざまなマナーについて解説します。

◯マナー1:焼香をする順番のマナーについて

焼香をする順番のマナーに関して、以下の内容を把握しておきましょう。

  • 最初は喪主から始め故人の近縁者から順に行うが、トラブルに発展することも多いため、事前によく話し合うことが必要である
  • 立場別に大きく分けると、親族による「親族焼香」と参列者による「一般焼香」の2つとなる
  • 規模の大きな葬儀の場合は、町内会や地域の有力者などの「来賓焼香」「指名焼香」や、会社や団体を代表して行う「代表焼香」を親族焼香と一般焼香との間に挟む

また、親族内での焼香の順番は以下の通りです。

  • ①喪主(故人の長男や長女)
  • ②故人の妻や両親
  • ③喪主の家族
  • ④喪主の兄弟やその家族
  • ⑤故人の兄弟姉妹
  • ⑥故人の配偶者の兄弟姉妹
  • ⑦喪主の配偶者の両親
  • ⑧喪主の配偶者の兄弟姉妹
  • ⑨喪主の従兄弟姉妹

同じ家族内では年長者から先に行います。

◯マナー2:焼香の際の基本的なマナーについて

基本的なマナーに関して、以下の内容を把握しておきましょう。

  • ・立ち上がるタイミング・・・前の人が自分の席に戻ったとき
  • ・一礼が必要なタイミングは3回
  • ①焼香台の前で遺族に一礼
  • ②焼香台に近づいて故人の遺影に一礼
  • ③焼香終了後そのまま後ろ向きに2~3歩下がって遺族に一礼

◯マナー3:焼香につきものの数珠について

数珠のマナーに関して、以下の内容を把握しておきましょう。

  • 基本的な持ち方・・・左手で房を下にして持つ
  • 本式数珠の玉の数は煩悩の数と同じ108個が一般的だが、宗派によって異なる
  • 数珠の宗派は葬儀ではなく自分の家の宗派に合わせる
  • 玉の数が少なく宗派を問わない略式数珠(片手数珠)の使用も増えている
  • 他人から数珠を借りることはマナー違反である
  • 持ち合わせがない場合は会場で購入するか手ぶらで焼香する

◯マナー4:焼香の際の服装について

服装のマナーに関して、以下の内容を把握しておきましょう。

  • 基本的に黒の礼服を着る
  • 鞄やストッキング・靴下などの小物も黒で揃える
  • 焼香の際にはマスクは外す

◯マナー5:焼香の際の香典について

香典のマナーに関して、以下の内容を把握しておきましょう。

  • 新札は不可
  • 表書きの書き方・・・御霊前・御香典・御佛料(仏式と異なる)
  • 香典袋・・・白黒の水引または蓮の花模様(仏式と異なる)

注意点をしっかりと把握し、正しい作法で焼香を行いましょう。

まとめ

ここまで、焼香の作法やマナーについて、また宗派ごとの違いや回数が異なる理由も解説しました。

焼香の回数やマナーは宗派によって異なるため、葬儀に参列する際は葬儀の宗派を確認しておきましょう。確認せずに参列してしまうと、マナー違反に繋がってしまう可能性もあります。

焼香には他にもさまざまなマナーがあるため、事前の把握が重要です。この記事を参考にして、正しい焼香の作法を身につけてください。