キリスト教の葬儀の流れ|カトリックとプロテスタントの違い

2020年6月22日 法事・法要
キリスト教の葬儀の流れ|カトリックとプロテスタントの違い

葬儀への参列経験が何度かある人であっても、初めてキリスト教式の葬儀に参列するとなると、戸惑いを覚えてしまうことでしょう。キリスト教式の葬儀には、日本で一般的に執り行われる仏式葬儀と異なるマナーがあるため、緊張してしまうことはやむを得ません。

今回は、キリスト教式による葬儀の流れについて、カトリックとプロテスタントに分けて紹介し、参列する上でおさえておくべきマナーを解説します。キリスト教式の葬儀に参列する際、マナー違反などの失敗をしたくないと考えている人は、ぜひ参考にしてください。

1.キリスト教の葬儀はカトリックかプロテスタントによって異なる

一口にキリスト教式の葬儀と言っても、カトリック教会かプロテスタント教会かによってさまざまな違いがあります。たとえば、通夜にあたる儀式をカトリックでは「通夜の祈り」、プロテスタントでは「前夜祭」と呼びます。

また、カトリックでは聖職者を「神父」と呼ぶのに対して、プロテスタントでは「牧師」と呼ぶことも、知っておきたい違いです。さらに、礼拝の際に歌われる歌はカトリックでは「聖歌」、プロテスタントでは「讃美歌」と呼ばれることもおさえておきましょう。

カトリックの葬儀では、故人の罪が神様に許されるように祈ります。一方、プロテスタントの葬儀は、故人が天国で安らかに過ごせるように祈ることが基本のスタンスです。カトリックとプロテスタントでは考え方が違うことをしっかりとおさえた上で、キリスト教の葬儀に参列しましょう。

2.カトリックにおける葬儀の流れ

カトリック教会式では、葬儀と告別式は別々に執り行われることが一般的です。ここでは、カトリック教会式の葬儀と告別式の一般的な流れについて、それぞれ紹介します。カトリック教会式の葬儀に参列する人は、ぜひ参考にしてください。

■葬儀の流れ

入堂聖歌
神父が聖歌とともに会場の教会に入堂した後、棺と遺族が入堂します。参列者は起立して迎えましょう。

開式の挨拶
神父が葬儀の開始を告げる開式の挨拶を行います。挨拶の前には神父が棺に聖水を注ぎ、香を棺や祭壇に振りまく献香を行うことが一般的です。

葬儀のミサ
葬儀のミサでは、主に「言葉の典礼」と「感謝の典礼」が執り行われます。言葉の典礼とは、神父が聖書の朗読と説教を行い、参列者全員で祈りを捧げる儀式です。
感謝の典礼では、遺族が祭壇にパンとぶどう酒を捧げた後、神父からキリストの体、すなわち聖体となったパンとぶどう酒を受け取る「聖体拝領」が行われます。

赦祷式(しゃとうしき)
故人の魂が復活すること、または生前の罪が許されることを願って祈りを捧げます。

■告別式の流れ

入堂聖歌
葬儀の際と同様に、神父が聖歌とともに会場の教会に入堂し、その後、棺と遺族が入堂します。参列者は起立して迎えましょう。

聖歌斉唱
参列者一同で聖歌を歌い、告別式を開式します。

弔辞・弔電紹介
故人がカトリック信者となった経緯などを交えた故人の経歴と、故人に寄せられた弔電が紹介されます。

献花
ご焼香の代わりに、献花の儀式が執り行われます。献花はご焼香と同様に、喪主・家族・親戚・友人・知人という順番で進められることが一般的です。

喪主挨拶
喪主が参列者に対して感謝の挨拶を行い、閉式となります。

3.プロテスタントにおける葬儀の流れ

プロテスタント教会式では、葬儀と告別式を分けずに執り行うことが一般的です。ここでは、プロテスタント教会式による葬儀のオーソドックスな流れを紹介します。プロテスタント教会式の葬儀に参列する人は、ぜひ参考にしてください。

開式の挨拶
プロテスタント教会式では、牧師は既に入堂しており、開式の挨拶から始められることが多い傾向です。開式を告げる挨拶の際には、オルガンによって賛美歌が奏でられます。

聖書朗読・賛美歌斉唱
牧師が聖書を朗読し、祈りを捧げます。その際、参列者は黙祷を行いましょう。祈りを捧げ終えた後は、参列者全員で賛美歌を歌います。

牧師による故人の紹介・説教
牧師が故人の経歴を紹介します。経歴には故人がプロテスタント信者となった経緯や、教会との繋がりといったエピソードが交えられることが一般的です。経歴の紹介が終わった後は、牧師が聖書の内容を踏まえた説教を行います。

祈祷・祝福の祈祷・喪主挨拶
故人が神のもとで安らかに過ごせるよう、牧師によって祈りが捧げられます。その後、もう一度賛美歌の斉唱を行うことが一般的です。賛美歌の斉唱が終わった後は、牧師が参列者に向けて祝福の祈祷を行います。
牧師による挨拶の後は、喪主が参列者に感謝の気持ちを伝える挨拶を行います。なお、喪主の挨拶はこの後に紹介する献花の後、出棺の直前に行われることも少なくありません。

献花・出棺
カトリック教会式の告別式と同様に、ご焼香の代わりに献花の儀式を行います。献花はご焼香と同じように、喪主・家族・親戚・友人・知人という順番で進められることが一般的です。献花が終わると棺が閉められ、火葬場に向けて出棺されます。

4.キリスト教の葬儀で覚えておくべきマナー

キリスト教式の葬儀にも仏式葬儀と同様に、覚えておくべき固有のマナーがあります。もし、マナー違反となる行動を取ってしまうと、喪主をはじめとする故人の家族に不快な思いをさせてしまうため、十分注意しなければなりません。

ここでは、キリスト教式の葬儀に参列する際におさえておきたい最低限のマナーや注意点について、4つ紹介します。キリスト教式の葬儀に参列予定の人は、必ず事前にチェックしておきましょう。

4-1.葬儀の際の服装・持ち物

キリスト教式の葬儀に参列する際の服装は、基本的に仏式葬儀と同じで問題ありません。男性は喪服、女性は黒無地のワンピースやアンサンブル、スーツなどを着て参列しましょう。靴やバッグなどの小物類も光沢の無い黒色のものを選び、強い輝きを放つ派手なアクセサリーを身に付けないように心がけてください。

4-2.御花料の金額

キリスト教式の葬儀に参列する際は、香典ではなく「御花料」を包みます。御花料の費用相場は以下のとおりです。

故人との関係 御花料の金額相場
両親3~5万円
兄弟姉妹1~3万円
祖父母1~3万円
その他の親族1~3万円
友人5千~1万円
職場関係者5千~1万円
近所3千~1万円

御花料を包む際は、一般的な香典袋ではなく、ユリの花や十字架などがあしらわれているのし袋や白無地の封筒を用意してください。水引は必要ありません。表書きには「御花料」と書いておけば、カトリック・プロテスタントを問わず対応できます。

4-3.献花の手順

キリスト教における「献花」は、カトリック・プロテスタントのいずれにおいても葬儀で執り行われる儀式です。一般的に、白い菊や白いカーネーションが用いられます。献花の手順・作法は以下のとおりです。

  • ① 両手で花を受け取り、遺族に一礼して献花台の前に進み出ます。
  • ② 茎を祭壇側に向けて、献花台に捧げます。花のすぐ下を右手で、茎の根元を左手で持つようにしてください。
  • ③ 一礼し、黙祷します。
  • ④ 前を向いたまま2、3歩下がり、遺族に一礼してから自席に戻ってください。

4-4.お悔やみの言葉

キリスト教式の葬儀では、「ご愁傷様です」や「お悔やみ申し上げます」など、故人との別れを悲しむお悔やみの言葉を言わないようにしてください。キリスト教では、死は永遠の命の始まりと考えられているため、決して不幸なことではありません。
遺族に対して何か言葉をかけるとすれば、「安らかな眠りをお祈りいたします」など、故人の平安・安息を祈る言葉を選ぶように心がけましょう。

まとめ

キリスト教式の葬儀は、カトリック教会式かプロテスタント教会式かで使われる言葉や儀式の内容、全体の流れが異なります。カトリック教会式に比べて、プロテスタント教会式の方が、全体的にシンプルな葬儀です。

また、仏式葬儀とは異なるマナーが多くあるため、マナー違反となる行動を取ってしまわないように、注意しなければなりません。

今回、紹介したキリスト教式葬儀の流れやマナーなどの特徴をしっかりとおさえて、心から故人の安らかな眠りを祈りましょう。